本当に地味な椅子だ。
暗い場所に置いてあったり、椅子の上になにかしら物がおいてあったら、ほとんどその状況にうもれてしまいそうなくらい地味な感じ。チョットとんがったデザインに目を惹かれがちな私などは、あっさりみすごしてしまうタイプの椅子だ。だが一度腰掛けてみると、その椅子の魅力にひきこまれてしまう。
ちょっとだけのつもりだったのが、おもわず長居してしまう。そんな心地よさがある。背もたれはないけれど、おしりをほっこりと包んでくれるカーブは優しくて疲れていた体が休まっていられる。夫が人間のお尻のカーブを研究し尽くして編み出した曲線。などではなくって、樽材の曲線をそのまま利用させてもらっている。まあ、夫のめのつけどころには拍手だな。
アルコスツール/アミ(曲線のスツール/ともだち)というのがこの椅子の名前。「椅子は一生の友」椅子と共に暮らしている国の人は言う。たとえその存在を忘れられようと、誰かが座るのをひっそりと待っていてくれるような地味な友だちは、一生の友にしたい。椅子の話である。人には望んではバチが当たる。
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