木のスプーンを使う楽しみはささやかだけれど・・・

「あら、水で濡れているのかな?」
そう思って、夫が作ったコーヒー豆を計るための木製のメジャースプーン(計量スプーン)を手に取ってみた。
でも濡れているのではなく、コーヒー豆の油分に覆われてそう見えたのだった。

使い始めて15年。ミルク多めのカフェオレみたいな薄茶色だったメジャースプーンは、コーヒー豆と一緒に暮らすうちに、豆と同じような琥珀色に染まった。しかも、豆の油分をたっぷり吸って今や艶々と、いや、ギラギラとも言える光を放つ存在になった。
ウブで生真面目だった青年が航海を繰り返すうちに、海と太陽と風に鍛えられ、たくましく頼り甲斐のある男性になった。そんな例えがぴたりとくるようなスプーンの変わり様を感慨深く眺めた。

ホワイトオークの美しい木目が琥珀色のグラデーションとなって浮かび上がっている。よくよく見ると、スプーンの表面にはノミとカンナで削られた小さな断面が様々な角度で混在している。そのスプーンの面の表情が一律ではなく、手作業の跡を残しているからこそ、趣のある光を放っているのだなと気がついた。この味わい深い輝きは、スプーンがコーヒー豆と暮らした15年間の喜びや苦労などの経験をそっと教えてくれているみたいだ。スプーンは、きっと苦労なんかはしていないと思うのだけれど。

道具は使えば使うほど、減ったり傷んだりするものだ。
このスプーンのように、使えば使うほどその良さが増える道具は貴重だなあと思う。
これから先、この木製のメジャースプーンの良さがどの様に増えていくのかは、使ってこその楽しみだけれど。
そんな楽しみは、ささやかであり、でもとても貴重で、暮らしの中の幸せのエッセンスになる。
せっせと使って、良さと楽しみを日々ささやかに増やしていこう。
さて、豆を挽いて美味しいコーヒーを入れましょう。

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