形態が似ているわけでもなくって。未来からやってきたロボットでもない。だが、機械や道具の不具合を訴える音には敏感に反応する耳を持っていて、そのかすかな音を拾うやいなや、CRC(機械油)を吹きかける。妻の仕事道具の不具合な音などは、遠くからでもよく聞こえるらしくてすっ飛んでくる。ポケットからCRCのボトルを取り出してとひと吹き。そして自分の持ち場へ戻っていく。そこらへんはちょっとドラえもんっぽいかもだけど。ドラ焼きは普通に好物の普通の人間の木工家。「誕生日は9月3日。ドラえもんの誕生日と一緒です。」と夫が答えているのを聞いて、私も初めて知ったドラえもんの誕生日。そんなわけで、時々「木ドラさん。助けて〜」と助けを要請したりもする。え?妻の子守り役ではありません。決して。
毎年9月3日には、ドラえもん誕生日イベントが盛大に開かれているみたいだけど、夫の誕生日イベントは開催されることもなくひっそりとその日は終わる。今年は夫からバースデイリクエストがあった。「誕生日は、丸っと一日お休みをください」こんな申し出は初めてで本当にびっくりした。温泉につかって、一日中ごろごろとしていたいんだそうだ。そういうわけで、今年の9月3日の工房はシーンと静かだ。薄暗くて音がしない工房を覗くと、制作途中の作品にちょうど光が差していた。何だろう?なんだか面白そうな、何か、が光っていた。ちょっとお茶目な仕掛けがありそうだ。
実はかなりお茶目。そして妻にはちょっと意地悪な一面もある夫。えーい。カミングアウトだ。優しくて、静かで思慮深い人。というのがメジャーな夫評だが、子育てが終了してからというもの、父親の面を外して面白さと変さを披露する様になった。友人が送ってくれた、夫のお茶目な行動を極々タイムリーに納めた写真は、夫の密かな一面を如実に現している。面白、変な人。だけど、今日はお誕生日でもあるし「ちょっとお茶目な木工家」ということにしておこう。そんな木工家らしく、使い勝手がよくって遊び心も盛り込んだ作品をどんどこ作ってください。と願ってこの写真を1つ目のプレゼントに。2つ目は車の中で活躍してくれるワイヤレススピーカーを。今年の名古屋展覧会のロングドライブ用。バースデイソングの代わりに、井上陽水の「なぜか上海」をそのスピーカーを通して流した。ニンマリとした後に、こうおっしゃった。「君の方が僕よりもたくさん使いそうだね。すっかり、ちゃっかりが身についてきた様で。」はい。そのと〜り。だけど、ありがとうのひとことは、とりあえず一番に言ってよね。
さてと、次は妻に意地悪な夫の一部始終を書かなくっちゃ。誰も信じてくれないだけれに、これは題材にする価値はありそうだ。タイムリーな証拠写真も必要だなあ。