洋樽の来歴を語るエンブレム

ティーテーブルや座卓、椅子の座などの材として使っている洋樽の鏡(樽の上蓋を鏡と言います)の部分にエンブレムプレートが付いているものが数枚あります。樽がいつ、どこで作られ、何に使われていたのかを示しているものです。
この洋樽のエンブレムプレートに興味を持った友人が、そこに記されている数字が何を表しているのか調べてくれました。
その調査の詳細と、日本での樽製造の歴史や現在の製造事情など、興味深い話題を綴ってくれた友人の寄稿をここに紹介します。

友人の木工家 清水久勝さんのFBに、洋樽の写真がアップされた。
ワインやウィスキーの熟成に使われた古い樽材のやわらかいカーブを生かして、素敵な家具を創っていらっしゃる清水さんを、私は尊敬と親愛を込めて久勝先生と呼んでいる。

FBに投稿された写真は、その材料となる洋樽のふた(鏡)の部分で、鋲打ちされたプレートに、HANDMADE CASK SHOWA YODAL PHONE06・・・と、樽の製作元であろう会社の情報がアルファベットで記されている。
ちょっとクラシックなフォントや、樽を作る職人を模したロゴもいい感じ。下のほうに刻まれている 1〜12 1、2、3の小さな数字は何だろう?この樽に熟成前のお酒が注がれた時を記すものか? 夏の入道雲のようにモクモクと興味がわいてきた。
久勝先生もその辺りは詳しくない様子だったので、ここはひとつ私が調べてみましょうと請けあって、まずはググってみることに。

グーグル先生によると、現在、国内の洋樽製造所は数か所しかないらしい。大手洋酒メーカーには社内に樽専門の部署があり、独立した製造所は1社のみとも。
そもそも洋樽の製法が日本に伝わったのは江戸末期、ジョン万次郎が伝えたとか。造船や測量などずいぶんいろんな技術を持ち帰った方だから、ありそうな話だ。
ワインやウィスキーが国内で醸造されてきた歴史と並行して、洋樽製造の歴史も紆余曲折を経て連綿と続いている。近年は、焼酎の醸造にも洋樽が使われているし、北米産のホワイトオークが主な材として使われてきた中で、国産のミズナラ、さらにスギやヒノキ、カエデなども試されているらしい。
材の見極めから製造、樽の内部に焼きを入れるトースティングやチャーリングなどなど、職人技の世界は奥深くておもしろい。

さて、プレートのSHOWA YODALという文字から行き着いた樽の製造元は、株式会社昭和洋樽製作所だった。昭和2年に洋樽の製造所として創業。現在は、公共施設やホールのフローリングなど、建築内装を手がける会社になっていた。
会社の
HPには「洋酒用熟成樽の製造から始まった当社は、培った技術を生かし、昭和61年にフローリング事業に参入・・・」とある。洋樽製作所という社名やロゴは残しつつも、洋樽の製作はされていない様子。

33年前か、こりゃ無理かな~。
半分諦めつつも問い合わせフォームからメールを入れてみた。本来は業務対応用であろうフォームに「単なる個人の興味です。御社がかつて製作された樽のプレートにある数字は何ですか?」などと酔狂な問い合わせ。ご担当者はさぞかし迷惑だっただろうが、ダメもとの問い合わせに、果たして回答は、、、あった。

プレート下部の数字は製造年月日を入れる為の数字とのことです。ちなみに、現在弊社は樽の製造はしておりません。

よし!ならばこの樽がいつ製造されたのか確認しようと
FBの写真を拡大してみたが、列記された数字には何も印がついていないのだ。さて、疑問は次の疑問をよぶ。迷惑ついでに再度の問い合わせを敢行。

「何も印がついてないけど、製造年月はどう確認すればいいですか?」
これにはご担当者も困惑?辟易?されたみたいで、副社長に「どう対応しましょうか」と社内メールの痕跡。なんと次の返信は副社長自らのメールだった。

「当社の洋樽を再利用して頂き有難うございます。然しながら当社は現在洋樽の製造はしておりません。当時の状況は確認できませんので刻印の件は返答しかねます。申し訳ございません。4002の件は当方ではわかりません。メーカーの熟成樽の通し番号かもしれません。以上ご連絡申し上げます。  ヨーダル 菅 」

さすがにこれ以上の調査は諦めざるをえない。株式会社昭和洋樽製作所の丁寧なご対応には心から感謝しつつ、これにて迷宮入り。

33年以上前に樽職人の手で作られた樽がその役割を終え、久勝先生の手もとから、また新たな姿で時を刻み始める日を、楽しみに待つことにしよう。

Yさんの骨のある調査と寄稿、そして株式会社昭和洋樽製作所様のご丁寧な対応に心より感謝いたします。ありがとうございます。
樽を削っている時に微かに洋酒の香りがしますが、残念ながら私はお酒の種類を嗅ぎ分けられません。今の所、樽の来歴は全く謎です。鼻の効く妻に匂いを嗅いでもらうと、何を貯蔵していたのかわかるかもしれません。ウイスキー?シェリー酒?ワインかな?
ともあれ、樽職人さんの手から引き継いだ材を活用して、長く使ってもらえる家具の制作に励みたいと思っています。

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