カンナで木を削っている時に・・・

カンナで椅子の足を削っている時に、ふと、プロダクトデザインを勉強中のある青年のことを思い出しました。
8ヶ月ほど前に、インターネットの検索で私の工房を見つけて訪ねてくれた学生さんです。

工房に着いた彼から一番最初に尋ねられたのは「木が好きで、作ることが好きで、家具作りを始められたそうですが、家具作りで一番好きなことはなんですか?」という質問でした。
「カンナで木を削ることです。削るごとに木の形が少しずつ変わっていくのと、木目が変化していくのが面白いです。」と答えると、
「僕も木が好きで作ることが好きですが、家具のデザインと構造を考えることが一番面白いです。」と言って、バックパックから彼が設計した椅子の図面と制作した椅子の写真を取り出して見せてくれました。
そして、自分のデザインした椅子をもっと良いものにしたいという相談を受けたので、図面と写真を見ながら検討を始めました。

デザインや構造の改善点、作り方、実用性、使う木の素材などの見直しをしながら、楽しい時間を過ごした後に、
「ブラックウォールナットで僕のデザインした椅子を作ってもらえますか?」と、彼から突然のオファーがありました。実は、自分が設計した椅子を作ってくれる家具作りのプロを探していたとのことでした。
「もちろん。作りますよ。」と答えると、制作費用がどれくらいかかるのかを確認した後、
「デザインを再検討して、お金を貯めて注文しに来ます!よろしくお願いします。」と言って帰って行きました。

このようなオファーは初めてでした。
彼の手書きの連絡先は工房の壁にピンで留めてあります。カンナがけの手を休めて、そのメモに目をやると、とても清々しい気持ちになりました。
大学4年生の秋をどう過ごしているかな?自分の好きなことをやり続けてくれるといいなあ。訪ねてくれる日を楽しみに待っています。

 

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